お風呂の手すりで後悔4選|建築士が教える後付けの位置と高さ

お風呂の手すりで後悔4選|建築士が教える後付けの位置と高さ 介護・バリアフリー

※本ページにはプロモーション(広告)が含まれています。

・親のために手すりを付けたのに、ほとんど使ってくれない…
・どこに、どの高さで付けるのが正解なの?

浴室の手すりで多い後悔は、寸法の間違いではありません。つかみたい瞬間に、手すりがそこにないことです。

壁の空いている場所やカタログの標準位置で決めると、「足を上げてからでないと届かない」配置になります。手すりがあっても、いちばん危ない瞬間を支えられていない状態です。

お風呂の手すりで多い後悔4つ
・浴槽をまたいだ後にしか手が届かない
・入るときと出るときで、握る手と体の向きが変わる
・横手すりが高すぎて、体重を預けられない
・水栓やカウンターと干渉して、握りたい範囲が使えない

リフォームの現場に携わってきた建築士の目線で、多い失敗、位置と高さの決め方、選び方の順にお伝えします。

お風呂の手すりで多い後悔4選

ユニットバスの壁に取り付けられた手すり

失敗の原因は工事ではなく「位置」です。とくに多いのが、浴槽の奥に付いていて、足が床から離れる前に握れないという配置。

どれも工事のミスではなく、位置の決め方で起きているものです。

手すりは、またぐ前に握れないと意味がない

浴槽の真横ではなく、少し奥へ付いている手すり。
これが、あとから直しに入るときによく見る配置です。奥にあると、片足立ちになってから手を伸ばすことになります。

逆に「付けてよかった」と言われやすいのは、浴槽の洗い場側の端に近い縦手すりです。近づく、向きを変える、足を上げる、またぎ終えて姿勢を整えるまでを、ずっと支えてくれます。

入るときと出るときで、握る手も体の向きも変わる

見落とされやすいのが、入る動作と出る動作の違いです。
入るときは右手で使えても、出るときは体の向きが逆になります。

同じ手すりが急に使いにくくなり、結局は壁に手をついて出ることになります。

片麻痺がある場合も、健側に付ければよいという単純な話ではありません。入る向きと出る向きの両方を見て決める必要があります。

横手すりが高すぎると、握れても体重を預けられない

高さのミスは、低すぎるより高すぎる側で起こります。

肩に近い高さに付いていると、握ることはできても下向きに力を掛けられません。手すりを持っているだけの状態になり、立ち上がりを助けてくれないのです。

反対に低すぎれば前かがみになり、立ち上がる途中で手を持ち替えることになります。持ち替えた一瞬こそ、いちばんふらつきやすい場面です。

長さより、最初に握る位置と握り続けられる範囲で決まる

長い手すりを付ければ安心、とは限りません。大事なのは長さではなく、最初に握る位置と、最後まで握っていられる範囲です。長い手すりでも、必要な場所が端部にかかっているだけなら支えになりません。

浴槽ふた、カウンター、水栓、シャワーホースとぶつかって、握りたいところだけ使えないケースもあります。図面上では成立していても、物を置いた状態で確認しないと見落としますよ。

シャワーのスライドバーを手すり代わりにするのは危険です。見た目は似ていても、身体を支える用途で作られていない製品があります。全体重を掛けると外れるおそれがあるため、耐荷重と用途を必ず確認してください。

4つに共通するのは、動作を見ずに壁の都合で決めたという点です。次は、そうなりやすい家の条件を見ていきます。

お風呂の手すりで後悔しやすい家の特徴

白を基調とした清潔なユニットバス

型番が分からない浴室は、下地が読めません。希望の位置に付けられるかが、現地調査を終えるまで決まらない家があります。

型番が分からない浴室は、下地調査から始まる

築年数が古く、メーカーや型番が分からない浴室は要注意です。壁のどこに補強が入っているかを確認できないため、希望の位置に付けられるかが最後まで読めません。築古の浴室では、下地調査から始まるものだと考えておいてください。

体格差がある家は、全員が安全に握れる高さを探す

三世代で暮らす家や、夫婦で身長差が大きい家では調整が必要です。いちばん支えを必要とする人に合わせるのが基本ですが、ほかの家族が使いにくくなっては困ります。1人に完璧に合わせるより、全員が安全に握れる高さを探すほうがうまくいきますよ。

1本だけなら、浴槽をまたぐ前から握れる縦手すり

本数を絞るほど、位置決めはシビアになります。1本だけ付けるなら、優先すべきは浴槽をまたぐ前から握れる縦手すりです。出入口に段差がある家なら、出入口脇の縦手すりも同じくらい効きます。

お風呂の手すりはどこに付ける?位置と高さの決め方

出入口・洗い場・浴槽まわりの手すり位置と高さの目安を示した図

床から750mmは、あくまで出発点です。数字で決めるのではなく、本人の足が床から離れる瞬間に手が届くかで調整します。

この章の要点
  • 出入口は、ドアを開ける前から握れる位置に
  • またぎ用と浴槽内の立ち座り用は、1本で兼用できない
  • 最終的な高さは、本人が無意識に手を伸ばした場所で決める

国土交通省の設計指針でも、移動用の手すりは床から750mmが標準とされ、身体機能の低下がある場合は状況に応じた設計が必要だと示されています。(出典:国土交通省「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」)

場所形状高さの出発点
出入口縦(600〜800mm)下端650〜750mm/上端1,250〜1,450mm
洗い場の移動用横床から700〜800mm
シャワーチェアの立ち座り縦またはL型座面高+200〜250mm
浴槽のまたぎ縦(600〜800mm)浴槽の洗い場側の端付近
浴槽内の立ち上がり横またはL型浴槽縁から150〜250mm上

出入口は、ドアを開ける前から握れる位置に付ける

出入口は、段差をまたぐ動作と、濡れた床へ踏み出す動作が重なる場所です。ドアを開ける前か、一歩入った直後に握れる位置を狙います。

ただしドア枠ぎりぎりに付けると、手と枠が当たったり折戸が干渉したりします。脱衣室側にも段差がある家なら、外側の手すりもあわせて検討したいところです。

またぎ用と浴槽内の立ち座り用は、1本で兼用できない

またぐときに要るのは、片足立ちの横揺れを抑える支えです。縦手すりが使いやすく、浴槽の洗い場側の端付近に付けます。長手方向の中央では、握れるタイミングが遅すぎます。

浴槽内から立ち上がるときに要るのは、低い姿勢から体を引き上げる支えです。横型やL型が向いていて、浴槽縁から150〜250mm上あたりを出発点にします。

1本で兼用しようとして中途半端な位置にすると、どちらの動作にも力が入らない手すりになってしまいます。

高さは、本人が無意識に手を伸ばした場所で決める

現場では、マスキングテープで仮の手すり位置を壁に貼ります。服を着たまま、実際の入浴動作を一連で再現してもらうためです。

  • ドアを開ける
  • 浴室へ入る
  • 椅子へ座る・立つ
  • 浴槽へ近づく
  • 足を上げてまたぐ
  • 浴槽内で座る・立つ
  • 逆の動作で出る

このとき「どこを握りますか」と質問しても、正確な答えは返ってきません。無意識に手が伸びた場所を見るほうが確実です。不安定になる一歩手前で手が出るので、そこが本当に必要な位置になります。

浴室の手すりは「転びそうになったときに握る物」ではなく、転びやすい動作に入る前から握っておく物です。本人の足が床から離れる瞬間を基準に決めると、失敗がぐっと減りますよ。

位置が固まったら、次は形状と取り付け条件を詰めていきましょう。

後悔しないお風呂の手すりの選び方

リフォーム工事中の養生と工具

形状より先に、下地が取れるかを確認します。壁パネルの継ぎ目から100mm以上離すなどの条件があり、好きな位置に必ず付くとは限りません。

この章の要点
  • またぎはI型の縦手すり、浴槽内の立ち座りはL型
  • 下地が取れない位置には付かない。型番の確認が先
  • 介護保険は上限20万円・1〜3割負担。着工前に申請する

形状は、またぎならI型・浴槽内の立ち座りならL型

I型、L型、浴槽グリップの3つが基本です。またぎ動作や出入口にはI型の縦手すり、浴槽内の立ち座りにはL型が向きます。

浴槽グリップは、壁に穴を開けずに設置できる製品もあるため、賃貸住宅や、退院直後で身体状況が変わる可能性がある場合に選びやすい方法です。(出典:Panasonic「ユクリア 浴槽手すり」)

ただしグリップは固定手すりの代わりにはなりません。体幹が大きくふらつく方、勢いを付けて立つ方、介助者が引き上げる使い方には向きません。浴槽の縁が湾曲していたり薄かったりすると、取り付けられないこともあります。

下地は、壁の好きな位置に必ずあるわけではない

下地の有無はメーカー単位ではなく、シリーズ・製造年・壁の構成・新設時の注文仕様で変わります。後付け用の部材で対応できる製品もありますが、条件付きです。TOTOの後付け手すりでは、壁パネルの継ぎ目から100mm以上離すことや、ねじ位置の裏に給水・給湯管がないことなどが条件とされています。(出典:TOTO お客様サポート)

現場では、ドア付近の管理ラベルで型番を調べ、メーカーへ設置可能範囲を照会します。それでも付かない場合は、位置をずらす、純正の後付け部材を使う、浴槽グリップへ切り替える、という順に検討します。

一般の壁用ボードアンカーを浴室へ流用するのは避けてください。取り付け直後は固くても、体を繰り返し引く力と浴室内の水分で緩むことがあります。穴あけ部分の止水処理やメーカー保証への影響もあわせて確認が必要です。

下地の話は見積書に出てきにくいので、現地調査のときに聞いておきましょう。

介護保険を使うなら、着工前に申請する

要支援・要介護の認定を受けている方が対象で、支給限度基準額は原則20万円、自己負担は所得に応じて1〜3割です。工事の前に自治体への申請が必要なので、先に着工しないよう気をつけてください。(出典:厚生労働省「介護保険における住宅改修」)

費用は、条件が良いI型で2万〜4万円、L型や専用部材を使う場合で3万〜6万円、裏面補強やパネル脱着が必要になると5万〜10万円以上。いずれも現場での実感値です。本体価格より、現地確認・防水処理・施工保証の占める割合が大きい工事だとお考えください。

介護目的なら、階段やトイレとまとめて施工するケースも多くあります。入浴だけ安全にしても、寝室からの移動途中で転んでしまえば意味がないからです。

限度額を一度に使い切らず、将来の変化に備えて残しておく判断もあります。枠が余っているからと必要性の低い場所へ付けるのは、避けたいところです。

浴室乾燥機はいらない?後悔4選|建築士が教える後付けの注意点
浴室乾燥機の後悔は、何をどこまで任せるかを決めずに付けたときに起きます。1回で乾くのは大人2人分です。100Vでも専用回路が要る機種など、後付けの落とし穴と暖房目的での価値を、現場を見てきた二級建築士が解説します。

手すりだけで浴室の安全は決まらない

ほっカラリ床で後悔?|建築士が教えるデメリットと対策

床が滑る・浴槽が深い・浴室自体が古い。この3つに当てはまると、手すりを付けても解決しません。

  1. 床が滑る/タイル床が濡れると強く滑る、浴室マットがずれてつまずいている場合は、床材の変更が先です
  2. 浴槽が深い/手すりを付けても脚が浴槽縁まで上がらないなら、低床浴槽や浅めの浴槽への交換を検討します
  3. 浴室そのものが古い/在来タイル浴室で床・壁・防水が傷んでいる、出入口段差と寒さも同時に問題なら、浴室ごとの改修が近道です

手すりに5万〜10万円掛けても、直後に浴室全体を交換すれば撤去になります。使用年数と傷み具合によっては、手すり単独を延命工事と割り切るのか、全体改修へ進むのかを先に決めたほうが無駄がありません。

手すり1本で済ませるか、床や浴槽まで手を入れるか。判断が分かれるところなので、複数の会社に現地を見てもらい、同じ条件で提案を出してもらうのが確実です。動作を見て位置を決められる会社かどうかも、そこで分かりますよ。

リフォーム相見積もりの正しい取り方|建築士が教えるマナーと注意点
リフォーム相見積もりの正しい取り方とマナーを建築士が解説。適切なのは2〜3社。同じ条件で依頼するコツ、失礼にならない断り方の文例、値引き交渉でやってはいけないことまで、業者側の本音でお伝えします。

会社選びに迷ったら

自分で何社も探して連絡するのは大変です。
一括見積もりなら、条件を入力するだけで対応エリアの会社から無料で見積もりが届きます。
まずは気軽に比べるところから。

PR

まとめ|お風呂の手すりは「壁の都合」ではなく「動作」で決める

浴室の手すりの後悔は、ほとんどが位置と高さのミスマッチです。

・つまずきやすいのは「またいだ後にしか届かない」配置。足が床から離れる前に握れるかで決まる
・入る動作と出る動作では、使う手と体の向きが変わる
・移動用の高さは床から750mmが標準。そこから本人の動作に合わせて調整する
・またぎ用と浴槽内の立ち座り用は別物。1本で兼用すると力が入らない
・壁の好きな位置に必ず付くとは限らない。下地確認後に位置変更や追加費用が出ることがある
・介護保険を使うなら、原則として着工前に申請する

手すりを付けても浴槽をまたげない場合、問題は握力ではなく浴槽の高さや入浴方法そのものにあることが少なくありません。ケアマネジャーや理学療法士に動作を見てもらうと、判断がぐっと楽になりますよ。

Q. お風呂の手すりはどこに付けるのが正解ですか?

A. 1本だけなら浴槽の洗い場側の端に近い縦手すりが基本です。浴槽へ近づく、向きを変える、足を上げる、姿勢を整えるまで一連で使えます。

Q. お風呂の手すりに介護保険は使えますか?

A. 認定を受けていれば住宅改修の対象になる場合があり、上限20万円・自己負担1〜3割です。工事前の申請が必要なので、着工前にケアマネジャーや自治体へ相談してください。

コメント