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・ガスコンロが寿命なので、この機会にIHへ替えたい
・IHにして後悔したという話を見かけて、踏み切れない
・そもそも、うちの家でIHが使えるのかが分からない
「IHクッキングヒーター本体15万円、取付工事費2万円」。見積書にそう書いてあったのに、現地調査のあとで10万円以上増えることがあります。増えた分はコンロではありません。分電盤と、そこからキッチンまで引く200Vの専用回路です。
ガスからIHへの入れ替えで最初に開けるのは、商品カタログではなく分電盤のフタです。ここを見ないまま金額を決めると、あとから「ここから先は別工事になります」という話になります。
結論として、IHクッキングヒーターの後悔は機種選びではなく、契約前に確かめなかったことから生まれます。
・後悔の中身は火力不足より、ガスと同じ手つきで料理できると思っていたこと
・金額を動かすのは本体ではなく、200Vの専用回路と分電盤
・幅60cmから75cmへの変更は、天板を15cm切り広げる工事ではない
・天板の割れは交換できる機種が多い。分かれ目は修理代ではなく使用年数
どれも、ガスコンロからの入れ替えを決める前の30分で確かめられることばかりです。
IHクッキングヒーターの後悔4選

後悔の中身は火力不足ではなく、アルミの雪平鍋と土鍋が使えなくなるところから始まります。替えたあとに出てくる不満は、だいたい次の4つに分かれます。
後悔1|手持ちの鍋は、半分残らないこともある
アルミの雪平鍋、銅の玉子焼き器、土鍋、耐熱ガラスの鍋。どれも磁力で熱を持たないので、電源は入っても温度が上がりません。
見落としやすいのは底の形です。使い込んで底が反ったフライパンや直径が小さすぎる鍋は、IH側が「鍋が乗っていない」と判断して途中で止まります。
買い替えの総額も、思っているより大きくなります。毎日使う鍋とフライパンを4〜5点そろえ直すと、ステンレスの多層鍋を混ぜて3万〜5万円ほど。工事費とは別に、この出費が最初の月に来ます。
ただ、全部を捨てる必要はありません。鍋の底に磁石を当てて、しっかりくっつけば使えます。残せる鍋を先に選り分けておけば、買い替えは半分以下で済みます。
後悔2|炒め物は、フライパンを持ち上げた瞬間に止まる
「IHは火力が弱い」とよく言われますが、正確ではありません。最大出力そのものは、ガスコンロに引けを取らない機種が多いです。
違うのは熱の伝わり方です。IHは鍋底を面で温めるので、鍋を持ち上げれば加熱は止まり、鍋肌に炎が回ることもありません。焼き網で餅を焼くような直火の使い方もできなくなります。
チャーハンや野菜炒めで鍋を振る癖が抜けない方は、ここでつまずきます。振っている時間は冷めている時間なので、水っぽく仕上がります。
週に何回、鍋を振っているか。一度数えてみると、自分に向いているかどうかが見えてきます。
後悔3|つまずくのは火が見えないことより、押す回数
高齢のご家族がいる家では、安全だからという理由でIHを勧められることがあります。ところが実際に出てくる不満は、火の見え方ではありません。「どこを何回押せば湯が沸くのか分からない」という操作の話です。
ガスコンロはつまみを回せば火が付き、戻せば消えます。IHは電源を入れて、口を選んで、火力を上げる。手順が1つ増えます。しかも天板のタッチ操作は、押した感触が返ってきません。
物理的なつまみに慣れた方ほど戸惑います。年齢だけで決めずに、ショールームで本人に湯を沸かしてもらうのがいちばん確実です。5分触れば、合うかどうかは本人が分かります。
後悔4|フラットな天板でも、放っておけば焼き付く
「掃除がいらない」と思って替えた方が、いちばんがっかりするところです。
五徳がないぶん拭き掃除は楽になります。ただ、吹きこぼれや鍋底の油をそのままにして次の加熱をすると、汚れは天板に焼き付きます。メーカーの案内でも、使うたびに汚れを取り除くよう書かれています。こすっても落ちません。焼き付いたら、専用のクリームクレンザーと丸めたラップで削ることになります。
冷めたら、その日のうちに1回拭く。手間はこれだけなので、習慣にしてしまいましょう。キッチン全体の後悔は、こちらでもまとめています。

IHの後付けで膨らむのは、本体ではなく電気工事

金額が跳ねるのは商品代ではなく、分電盤を開けてから決まる200Vの専用回路です。「工事そのものができない」家はそう多くありません。現場で起きるのは、できるけれど想定より高くなった、というほうです。
200VのIHは、単相3線式でないと電源が取れない
住宅用のビルトインIHは、ほとんどが200V仕様です。この200Vは、引き込みが単相3線式であることが前提になります。
古い一戸建てで電気の容量が小さいままの家は、いまも単相2線式のことがあります。この場合は工程が5つに増えます。引き込みと幹線の変更、電力会社への申請、メーターまわりの対応、分電盤の交換、そして専用回路の新設です。
怖いのは、盤だけ替えれば済むと思って見積もってしまうことです。メーターから分電盤までの幹線が細い家では、外壁側の受け点までやり替えになることもあります。単相2線式かどうかは契約内容や分電盤の表示で分かるので、早めに確かめておきましょう。
分電盤に空きがなければ、盤ごと交換になる
実際に遭遇しやすいのは、単相2線式よりもこちらです。盤の空きは意外とありません。
IHには専用の回路が1つ要りますが、分電盤のブレーカーが埋まっていると足す場所がありません。主幹の容量に余裕があれば増設盤で逃がすこともあります。ただ、古い盤に継ぎ足すより、盤そのものを更新したほうが後々きれいに納まる家も多いです。
契約アンペアも一緒に見ておきたいところです。容量が足りないまま使うと、電子レンジやエアコンと重なった瞬間にブレーカーが落ちます。電気工事の目安をまとめると、次のようになります。
| 工事の内容 | 費用の目安 |
| IH専用の200V回路を1つ増設 | 3万〜8万円 |
| 分電盤の交換 | 5万〜10万円 |
| 容量アップをともなう盤の工事 | 上記に5万〜15万円ほど加算 |
| 単相2線式から3線式へ(幹線・申請まで) | 10万〜20万円超 |
一般的な住宅の分電盤交換は、5万〜10万円程度と紹介されています。(出典:ENEOSでんき)そのほかは現場での実感値なので、幅を持って見てください。
配線を通せるかは、天井裏と床下で決まる
盤に空きがあっても、そこからキッチンまで線が届かなければ工事になりません。距離より経路で決まります。
点検口から天井裏に入れる家や床下に潜れる家なら、壁や天井を壊さずに通せます。逆に、盤とキッチンが家の反対側にあって経路がふさがっていると、壁を一部開けて配線し、直したうえでクロスを張り替えることになります。この内装の復旧費が、あとから出てくる追加費用の正体です。
現地調査では、分電盤の位置とキッチンまでの距離を必ず一緒に見てもらってください。写真のやり取りだけで金額を出してもらうのは、この工事には向いていません。熱源をまとめて電気に寄せるときの考え方は、こちらでも触れています。

IHのメリットは、火を使わないことに集約される

満足度が高いのは料理好きよりも、毎日コンロの五徳を外して洗っていた人です。注意点を並べてきましたが、替えてよかったという声もはっきりしています。
五徳がないので、掃除は拭くだけで終わる
ガスコンロは五徳とバーナーキャップを外して洗い、受け皿の焦げを落とす手間がありました。IHは平らな1枚です。布巾で一拭きすれば終わります。毎日コンロまわりを掃除している方ほど、この差を大きく感じます。もともと掃除の頻度が低い家では、満足度はそこまで上がりません。
袖口に火が移る心配がなくなる
炎が出ないので、着ている物に火が移る事故は起きません。立ち消えや、消し忘れて鍋を空焚きする心配も減ります。親の家をどうするか考えている方にとっては、ここが決め手になることも多いはずです。
ただし、天板の余熱は残ります。小さなお子さんがいる家では、余熱ランプの見え方も確かめておきましょう。
夏の台所が、目に見えて涼しくなる
熱の出方が違います。ガスは燃えた熱が鍋の周りへ逃げますが、IHは鍋そのものを温めるので、部屋に出ていく熱が減ります。真夏に揚げ物をしたときの体感は、はっきり変わったと言われます。
換気が限られるマンションでは、エアコンの効きまで変わったという声も出ます。台所の暑さに毎年うんざりしている方は、これも判断材料に入れてみてください。
IHクッキングヒーターの選び方は、幅から入らない

60cmから75cmへの変更は、ワークトップを15cm切り広げる工事ではありません。ここは誤解が多く、見積書の金額にもそのまま出ます。
- 実際に使う人が、湯を沸かすところまで自分で操作できるか
- 火力の上げ下げが、天板のタッチか手前のダイヤルか
- いつも大きい鍋を置く口が3.0kWかどうか
- グリルの扉が、いまのキッチンの引き出しと干渉しないか
どれもカタログの比較表では分からないものばかりです。理由を1つずつ書いていきます。
幅は、天板を切る前提で考えなくていい
60cmと75cmという表示は、主にトッププレートの横幅を指しています。本体がキッチンに落ち込む部分の開口寸法は、どちらも約560×460mmで共通の機種が多いです。
つまり60cmから75cmへ替えるだけなら、多くの場合はワークトップを切り広げずに入ります。「幅が広がるので天板の加工が必要です」と説明されたら、機種の施工図を見せてもらってください。
現地で見るのは、穴の大きさより納まりのほうです。75cmのプレートが左右の壁や立ち上がり、見切り材に当たらないか。レンジフードの位置とずれていないか。測らないと分かりません。
本当に加工が要るのは、以前のコンロが独自寸法だった古いキッチンなどです。費用は材質で変わり、ステンレスの軽微な加工で1万〜3万円、人工大理石で3万〜8万円ほど。セラミックや石材は加工できないと判断することもあります。角からひびが入りやすいので、写真ではなく現物を見てもらってください。
火力は最大値より、3.0kWの口が1つあるかを見る
カタログの最大火力は、いちばん強い口の数字です。3口あっても、すべてが同じ出力とは限りません。手前の左右が強く奥は弱い機種もあり、いつも大きい鍋を使う口が弱いほうだと、替えたあとに「前より遅い」と感じます。
3口を同時に全開にすると、機種によっては合計出力の上限で自動的に絞られます。鍋の日にまとめて使う家では、ここも聞いておくと安心です。いちばん使う口が3.0kWかどうか。これだけ確かめれば、火力の後悔はほぼ避けられます。
グリルは、いま使っていないなら省いていい
魚焼きグリルは、価格差の出やすい部分です。使わない設備は要りません。いまのガスコンロでグリルを月に何回使っているか、思い出してみてください。
ほとんど使っていないなら、グリルなしの機種にして、その分を火力や操作性に回したほうが満足度は上がります。グリルなしにすると、その下が収納になる機種もあります。フライパンや鍋の置き場所が増えるほうが、日々は快適です。設備を1つ減らすかどうかの考え方は、食洗機の記事でも同じ話をしています。

IHは10年後に、もう一度お金がかかる

天板を1回直すか本体ごと替えるかの分かれ目は、修理代ではなく使用年数です。入れ替えのときに、10年後の話まで聞かされることはまずありません。
天板だけ交換できる機種は、思ったより多い
鍋を落とした、瓶を落とした、傷が入ったまま使い続けた。トッププレートの相談は、こういう理由で来ます。
まず、割れたまま使わないことです。メーカーも、割れた場合は使用を中止して専用回路のブレーカーを切り、修理を依頼するよう案内しています。水がしみ込むと、内部の基板まで傷みます。
そのうえで、部品の供給が残っている機種なら、天板だけの交換に対応してもらえることが多いです。メーカーが公開している修理料金では、割れや傷でおよそ2万9,700円〜4万2,900円という目安が示されています。
メーカーと機種によっては、5万〜7万円台になる例もあります。まずは品番を控えて、修理受付に部品があるかを聞いてみてください。
10年を超えたら、本体の見積もりも一緒に取る
直すか買い替えるかを決めるときに見るのは、修理代ではなく年式です。
納得しにくいのは、天板を5万円で直した半年後に、基板でまた5万円かかるという流れです。買い替えなら電気工事はすでに終わっているので、かかるのは本体代と取り替え費だけになります。
| 状況 | 現場での見方 |
| 使用4〜5年・ほかは正常 | 天板の修理で十分 |
| 使用10年前後・グリルにも不安 | 本体交換の見積もりも取る |
| 部品の供給が終わっている | 本体交換になる |
| 2回目以降の故障 | 修理を重ねない |
修理を頼むときに、同じ会社へ本体交換の金額も出してもらうと迷いません。並べてみると、たいてい答えは出ます。
ガスに戻す費用は、ガス管をどこで止めたかで変わる
数は多くありませんが、ガスに戻したいという相談もあります。理由は故障ではなく、炒め物や直火の料理が合わなかった、操作がしっくりこなかった、というものがほとんどです。
キッチンの足元までガス管が残っていて安全に閉栓してある家なら、有資格者に再接続してもらい、漏えい検査をしてコンロを据えるだけで済みます。ビルトインガスコンロの基本的な交換工事は2万9,700円という例が公開されています。(出典:東京ガス)
反対に、床下や屋外で配管を撤去した家、メーターまで外して契約を止めた家では、新設に近い工事になります。本体代を別にして、配管が近くに残っていれば3万〜6万円、数mの延長で5万〜10万円、屋外配管から復旧するなら10万〜20万円超を見ておくと大きく外しません。
だからこそ、IHにするときの止め方が効いてきます。使わないから全部撤去、と即決せず、どこまで残すかを打ち合わせで決めておきましょう。200Vの回路も、ガスに戻したからといって外す必要はありません。見積書のどこにこうした工事が入るかは、こちらの記事の読み方が役に立ちます。

IHとガスコンロは、築年数では選び分けない

築40年でも電気を更新済みなら簡単に付きますし、新しい家でも配線経路が悪ければ追加工事になります。判断の入口は年式ではありません。
- 向く|すでに200Vが取れる/掃除の負担を減らしたい/火の消し忘れが心配
- 向く|給湯もいずれ電気に替える予定がある/鍋を振ることにこだわりがない
- 迷う|単相2線式からのやり替えで、コンロのために20万円近い電気工事になる
- 迷う|配線のために内装を大きく壊す/マンションで容量を上げられない
- 迷う|直火の料理を続けたい/愛用の鍋をほぼ全部替えることになる
迷う側に3つ以上当てはまるなら、無理にIHへ寄せなくてもいいと考えています。判断するときは、次の順番で整理していきます。
- 電気設備/単相3線式か、主幹の容量、盤の空き、キッチンまでの配線経路
- キッチンへの納まり/開口寸法、左右の壁との距離、レンジフードの位置
- 料理のしかた/鍋を振るか、直火を使うか、土鍋や銅鍋の愛用品が多いか
- 使う人/実際に操作できるか。年齢ではなく、触ってもらって決める
- 家全体の熱源/給湯器はガスのままか、いずれ電気に替えるか
1番で大きな工事が要ると分かった時点で、機種選びは後回しにしてかまいません。本体のグレードを1つ下げるより、電気工事の中身を知るほうが総額に効きます。
5番も見落とされがちです。コンロだけIHにしても、給湯器がガスのままならガスの契約は続き、毎月の基本料金は残ります。電気に寄せるほど、停電したときに止まる範囲も広がります。光熱費で考えるにしても停電で考えるにしても、給湯器をどうするかまで含めたほうが正確です。
まとめ|IHは、本体を選ぶ前に分電盤を見る
「うちの家でIHが使えるのか分からない」という不安は、分電盤のフタを開ければ半分は解けます。残りの半分は、いまの台所で何を作っているかを思い出せば見えてきます。
・後悔の中身は火力不足ではなく、鍋の入れ替えと操作の慣れ
・金額を動かすのは本体ではなく、200Vの専用回路と分電盤の状態
・60cmから75cmは、多くの機種で天板を切らずに入る。見るのは左右の納まり
・天板は交換できる機種が多い。直すか替えるかは修理代ではなく使用年数で決める
・ガス管をどこで止めるかは、IHにするときに決めておく
IH本体の値段と、IHを使える家にするための工事費は別物です。契約前にここを分けて聞いておけば、追加費用の大半は先に読めます。

先に分電盤を見てもらったら、見積もりの出方がまったく違いました。
コンロを選ぶ前に、分電盤とキッチンまでの距離を見てもらってくださいね。
電気工事がどこまで必要になるかは、会社によって見立ても金額も変わります。同じ条件で何社かに出してもらうと、含まれている工事の違いがはっきり見えてきます。

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