玄関引き戸で後悔4選|建築士が教える開口幅と断熱の注意点

玄関引き戸で後悔4選|建築士が教える開口幅と断熱の注意点 介護・バリアフリー

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いま玄関の出入りで困っていないなら、引き戸に替える理由はありません。

読んでほしいのは、車いすや歩行器を通す予定がある方です。

・親のために玄関を引き戸にしたいけど、寒くならない?
・車いすは本当に通れるようになるの?

介護のために替えたのに、思ったほど有効開口が広がらなかった。

車いすを実際に通してみて、はじめて気づきます。
レールの掃除より、こちらのほうがずっと重い後悔です。

玄関引き戸で多い後悔4つ
・思ったほど有効開口が広がらなかった
・すき間風が気になるようになった
・レールに砂がたまり、動きが重くなった
・本体価格だけで比べて、付帯工事で膨らんだ

既存枠の内側に新しい枠が入り、通れる幅が狭くなることを示した図

玄関引き戸で多い後悔4選

日本の住宅の玄関引き戸

引き戸に替えたあとで「そこは聞いていなかった」と言われやすい点を、4つに絞りました。

思ったほど有効開口が広がらなかった

この後悔は、完成してから気づきます。

今の玄関改修は、既存の枠を残して新しい枠をかぶせるカバー工法が中心です。壁を壊さず1日で終わる商品がメーカーから出ています。

ただし新しい枠が入るぶん、開口は内側へ寄ります。現場の目安では片側10〜30mm、左右合わせて20〜60mmほど狭くなると考えておきたいところです。

さらに引き戸には、ハンドル部分の「引き残し」があります。枠の内寸の半分がそのまま通れる幅になるわけではありません。

メーカーの資料でも、一般的な1間幅の既存の玄関引き戸で有効開口は約750mmとされています。カバー工法ではさらに狭くなるため、開口を100mm以上広げられる2枚連動引込み戸が用意されているほどです。

すき間風が気になるようになった

引き戸は寒い、と聞いたことはありませんか。

実際のところは「昔ほどではない」が答えです。ただし同じグレードなら、開き戸のほうが気密を取りやすいという構造の差は残ります。

引き戸は扉を横へ滑らせるため、動くための隙間が要ります。開き戸のように扉を枠へ押しつけてパッキンを潰す構造とは違うからです。

とはいえ、古いアルミの引き戸と今の断熱引き戸はまったくの別物です。メーカー各社が断熱仕様をそろえています。

古いアルミの引き戸から最新の断熱タイプへ替えるのなら、結露は軽くなり、すき間風もかなり減ります。

すき間風が理由で替えるのなら、断熱タイプを選ぶ価値は十分にありますよ。

レールに砂がたまり、動きが重くなった

住み始めてから出てくるのが、レールの手入れです。

砂がたまる、落ち葉が入る、小石を噛むと急に重くなる。このあたりは引き戸ならではの声です。

ただし、定期的に掃除できる方なら致命的な欠点ではありません。玄関まわりに砂が多い立地なら、掃除の手間も見込んでおきましょう。

本体価格だけで比べて、付帯工事で膨らんだ

価格の後悔は、本体ではなく周辺で起こります。

金額そのものは契約前に分かるので、驚くのはたいてい追加のほうです。タイルの補修、袖壁の撤去、腐った下地の交換あたりが代表格になります。

電気錠の配線、インターホンや照明の移設、外壁の補修、段差の解消も乗ってきます。本体価格だけを並べて安い会社を選ぶと、あとで差が消えることもあります。

4つのうち、いちばん重いのは開口幅の後悔です。次は、開口不足が起きやすい家の条件を見ていきます。

玄関引き戸で後悔しやすい家の特徴

一戸建て住宅の外観

同じ工事でも、家の条件によって結果はかなり変わります。

間口が狭く、施工後に幅を確保できない家

引き戸にしても、通れなければ意味がありません。

既存の間口がぎりぎりの家では、カバー工法で狭くなったぶんが致命傷になります。介護目的なら、施工後に800mm以上を確保できるかが分かれ目です。

800mmは現場で目標にしている数字で、根拠は後半で説明します。

足りないと分かったら、袖の部分を使うプランや開口の拡張まで視野に入れましょう。

北向きや強風で、玄関がもともと寒い家

気密を最優先したい家では、慎重に考えたいところです。

北向き、強風をまともに受ける、玄関ホールまで暖房している、家全体が高気密、風除室がない。当てはまる項目が多いほど引き戸は不利になります。

寒冷地だから一律で引き戸はやめましょう、とは言いません。ただし断熱と気密を最優先するなら、最新の開き戸のほうが勧めやすくなります。

戸を引き込む側の壁が使えない家

意外な障害物は、扉ではなく壁の側にあります。

引き戸は開いた扉が収まる場所を必要とします。照明やインターホン、柱が引き込む側にあると、そのままでは納まりません。

移設すれば解決しますが、そのぶん費用は上がります。図面ではなく現地を見てもらってください。

それでも玄関を引き戸にする価値がある家

それでも玄関を引き戸にする価値がある家

弱点を並べましたが、条件が合ったときの効果は大きい工事です。

  1. 車いすや歩行器を今すでに使っている家
  2. 扉を開けるために一歩下がる動作がつらい家
  3. 玄関ポーチが狭く、開き戸の動く範囲が邪魔になる家
  4. ベビーカーや大きな荷物を毎日出し入れする家
  5. 強風で開き戸があおられやすい家

いちばん評価されるのは、開け閉めのときに体を避けなくていいことです。

車いすや杖を使っていると、開き戸の「一度下がって扉をかわす」動作がとても面倒になります。引き戸なら好きな位置で止めておけるので、介護の場面ではここが効きます。

目的は「引き戸にすること」ではなく「玄関を安全に出入りできること」です。目的を取り違えると、数十万円かけて引き戸にしたのに上がり框を越えられない、という本末転倒な工事になってしまいます。

自分の家が当てはまりそうなら、次の選び方に進んでください。

後悔しない玄関引き戸の選び方

後悔しない玄関引き戸の選び方

開口、断熱、工法と費用。上から順に決めていきます。

完成後の有効開口で選ぶ

商品を決めてから寸法を見るのでは、順番が逆です。

まず施工後に実際に通れる幅を出してから、商品を選びます。介護目的では、逆にすると取り返しがつきません。

現場で目標にしている数字を並べておきます。

完成後の有効開口使い勝手の目安
750mm前後一般的な車いすが正面から通れることは多いが、余裕は少ない
800mm最低限ここを目標にしたい
850mm程度かなり使いやすくなる
900mm前後介助者や曲がる動線まで考えると安心

いずれも現場での実感値です。国の高齢者住宅向けの情報でも、車いすを想定した出入口や廊下は800〜900mm程度の内法幅が推奨されています。(出典:さつき安心住宅情報(国土交通省)

ただし、玄関は幅だけを見ても足りません。出てすぐ90度曲がるのか、上がり框に段差があるのか、ポーチに柱があるのかで使いやすさは変わります。

見積書に「施工後の有効開口 約○○mm」と書いてもらってください。「今より何mm狭くなる」ではなく「完成後に何mm通れるか」を数字で示せる会社なら安心です。介護目的でここを曖昧にすると、引き渡し後の不満につながります。

幅が足りないときは、2枚連動引込み戸や袖部分を使うプラン、開口の拡張という順で検討していきます。

断熱と気密の条件で選ぶ

寒さが心配なら、比べる相手を間違えないことです。

古いアルミの引き戸と最新の断熱タイプを比べれば、後者が圧勝します。一方、最新の高断熱な開き戸と比べるなら、開き戸のほうが有利です。

すき間風の相談を受けたとき、原因が商品とは限らない点も知っておいてください。戸車の調整、枠の垂直や水平、既存躯体のねじれで体感は変わります。

替えたばかりなのに風が入る場合は、まず建て付けの調整を疑いましょう。

工法と費用で選ぶ

カバー工法で済むか、壁を壊すかで金額も工期も変わります。

工事の内容工事込みの目安
既存の引き戸から引き戸へ(標準のカバー工法)35万〜60万円前後
断熱仕様・電気錠・大型タイプ50万〜80万円前後
開き戸から引き戸へ(枠の外側に納める工法)45万〜80万円前後
2枚連動・大開口・高グレード70万〜100万円超
壁を壊して開口を変更+外壁やタイルの補修70万〜120万円超

いずれも現場での実感値です。地域、間口、商品、外壁材、電気錠の有無でかなり動きます。

工期についても、現場での感覚をお伝えします。カバー工法なら基本は1日です。

電気工事や土間の補修が絡むと1〜2日、壁を壊して外壁まで触るなら3〜7日ほどを見ておくと安心できます。

介護保険については、扉の取替えが住宅改修の対象工事として挙げられています。

ここで誤解が起きやすいので、はっきりお伝えします。制度の中身は20万円まで工事代が出る、という仕組みではありません

支給限度基準額が原則20万円で、そのうち所得に応じて7〜9割が給付されます。つまり戻ってくるのは最大でも14万〜18万円です。

60万円の玄関改修をしても、20万円を超えた部分は自己負担になります。玄関の引き戸が20万円以内に収まることは、今はかなり少ないとお考えください。

制度の詳しい流れと、ほかの場所の費用はこちらでまとめています。

最後に、引き戸にする前に確かめてほしいことがあります。

  • 握り玉が回せない → レバーハンドルへの交換で足りることがある
  • 扉が重い → 丁番やドアクローザーの調整で軽くなることがある
  • 上がり框でふらつく → 扉より縦手すりのほうが効くことがある
  • 車いすで入りたい → 最大の障害がポーチの段差や上がり框のこともある

数万円で解決する話なら、そちらが正解です。扉の交換ありきで進めない会社を選んでください。

同じ相談でも、引き戸を勧める会社と、手すりで十分ですと答える会社に分かれます。その差がそのまま数十万円になるので、複数社に現地を見てもらってから決めると納得して進められますよ。

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まとめ|玄関引き戸は「完成後に何mm通れるか」で決まる

玄関引き戸の後悔は、商品選びではなく寸法の確認不足から生まれます。最後に要点をおさらいします。

・カバー工法では枠が内側に入り、左右で20〜60mmほど開口が狭くなる
・ハンドルの引き残しがあるため、枠の内寸の半分が通れる幅ではない
・介護目的なら、完成後の有効開口800mm以上をひとつの目安にする
・同じグレードなら開き戸のほうが気密を取りやすい。北向き・強風の家は慎重に
・介護保険は「20万円まで出る」ではなく、20万円のうち7〜9割が給付される
・扉を替える前に、レバーハンドル化や手すりで足りないかを確かめる

介護目的なら、本人が使っている車いすや歩行器を現場に持ってきてもらうのがいちばん確実です。図面の数字より、実際に通してみたほうが早いですよ。

よくある質問にもお答えします。

Q. 玄関引き戸のデメリットは何ですか?

A. 有効開口の狭さと、気密の取りにくさが中心です。レールの手入れも必要になりますが、掃除ができる方なら大きな欠点にはなりません。

Q. 玄関引き戸に介護保険は使えますか?

A. 扉の取替えは対象工事に挙げられているため、対象になる場合があります。支給限度基準額は原則20万円、給付はそのうち7〜9割で、着工前の申請が必要になります。

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